美人は3日で飽きる、と言いますが、その美人がもし自分を優しい気持ちにさせてくれたり、想像力を掻き立ててくれたり、そのうえちょっぴり小悪魔だったりしたら、絶対飽きないと思うんですよ。
滝の白糸
は、まさにそんな存在。
一見(一聴)して美しい!と思わせるキャッチーなメロディーや歌詞に溢れていて、そして、知れば知るほど夢中になれる作品。
初演は2014年。
再演が2015年。
オペラ《滝の白糸》再演から、再々演に向けて! - mezzosoprano 鳥木弥生blog
今回は序曲と3幕のみの、演奏会形式でしたが、非常に興味深いプログラムの一部として演奏されたこと、これもまた素晴らしいことだと思いました。
前半もできれば客席で鑑賞したかったけれど、残念ながら楽屋でモニター鑑賞。
そして私達の滝白。
当初3幕のみの予定が、序曲が追加され、お客様にとっては今回演奏されない1、2幕の雰囲気もなんとなく感じていただけるような気もするし、良かったと思うのですが、私にとっては、これが少々困ったことに......。
この滝の白糸、原作は泉鏡花の「義血俠血」という短編小説ですが、
「滝の白糸」とタイトルを変えられ、何度も映画化や舞台化されているのはドラマチックでやるせないストーリーが時を超えて人々の心を捕らえて離さないからでしょう。
身分違いの恋、水芸、殺人、裁判シーン......キーワードで見ただけでも、よく出来たドラマだなあ、と、つくづく思います。
そんな、感動必至のお話に美しいことばとメロディーが与えられたオペラ版、滝の白糸。
歌っている方も、どうしても心をもっていかれちゃうのです。抑えようもなく涙が流れてしまったりするのです。
舞台装置、衣装や演出付きの公演であれば役に入っている以上、何でも流れるままにしておけばよいのですが(笑)、今回の演奏会形式では、音楽を聴いてもらうため、というのが主だと思うし、お客様も一幕から観ているわけではないし、プログラムにも書いてあったとはいえ、皆さんがストーリーを追えているかどうかもわからず......あと、舞台が明るいし!
指揮者の横に正面向いて座ってるソリストがずっと泣いてる。
て、ちょっと、どうかな、と思いますよね(笑)。
二日間のリハーサル中はやはり堪えきれず何らかのポイントで涙がだばだば流れてしまっていたんです。
で、もう、いっそ今のうちに泣いておこう、そんな自分にドン引きして、本番は泣かずに済むに違いない、と。
実際リハーサル1日目よりは2日目はちょっと我慢が効いたので、慣れたかな、と思っていたんです。
ところが、事前のリハーサルでは聴いていなかった序曲を当日リハーサルで2年前の再演以来久々に聴いたら、やっぱり慣れが足りなくて!!
それでも本番は我慢しきったぞ!と、思っていたんですが......。
「母ちゃん、序曲から顔が泣いてた」
と、方々から言われてしまいました。
もちろん、役として満面の笑みであるはずがないし、せっかく2年ぶりにやってきた、大好きなアリアを歌う機会、ただ歌うのではなくしっかりドラマを感じてもらわないともったいない!というプロ意識として、欣弥の母として、そんな顔になってたんだと思いますが?!......
まあ、結局フィナーレ近く、彰子さん白糸のフレーズで涙を我慢しすぎて鼻水が出始めましたけどね(笑)
滝の白糸こと水島トモこと、中嶋彰子さんと。
何だろう、黛まどかさんの詞には素直に、そしてしみじみグッとくるし、千住さんの音楽と中嶋さんの歌にはうっかりヤラレタ!て感じで泣かされるんですよね。滝の白糸のクセになる小悪魔性の秘密かもしれません。
そして、今回は豪華な二期会ソリストの面々が便宜上合唱内ソリスト、と呼ばれるパートを歌い、また、合唱を東響コーラスが歌ったのは、フレッシュな風を感じられた一因かも。全然フレッシュじゃない、初演から参加の清水那由太さんもいましたけどね(笑)!再演では別役だったので初演以来の那由太出刃打ち、三幕だけで出番が少なく残念でしたが、聴けて嬉しかった!
とかく思い入れというのは、物事をより複雑にしたりもしますが、このプログラムを熱く推し進めてくれた大友マエストロが、その熱い思い入れを隠そうともせずに、初めてこの作品に携わった方々とも非常に力が入ったリハーサルをやった効果は、本番にしっかり結実していました。
皆さん本当に素晴らしかったし、終演後は大友マエストロ、千住さんも交えてみんなで打ち上げをしてすごく楽しかった!
すでに初日リハーサルでびっくりするほど準備万端だった白糸一座初参入の皆様に、大友マエストロがかけていた「こんなにしっかり準備してくれてありがとう」という言葉には、本当に心がこもっていて。
でもそこで満足せずに更に作品をより良く伝える方向を目指し続けたマエストロに、私も魂を込めた「ありがとうございます」という気持ちでいっぱいでした。
普段は指揮者に「ありがとう」とか言われても、ひねくれ者の私は、
(別にあなたのためじゃないし...)
なんて思ってしまいがちなんですけどね(笑)。
大友直人マエストロと。そして、千住明さん、村越欣弥こと、高柳圭さんと。
新たなメンバーを得て、白糸一座は更に結束を深めた様相!
見よ!この、都内某所?でのギュウギュウ打ち上げ(二次会)。
初演、再演の演出家、十川稔先生と、合唱内ソリスト、特に車屋さん役で大活躍した宮下雄貴さんは演奏会から見に来て下さり、やはり初演、再演で南京出刃打ちを演じた森雅史さん、再演で口上の芸人を演じた髙畠慎吾さんも二次会に駆けつけてくれて。
オペラ「滝の白糸」一座会。浅草にて。 - mezzosoprano 鳥木弥生blog
↑この時、すでにいっぱい人が集まったなー、て感じでしたが、どんどん増えてます(笑)。
再再演の時には宴会場でも借りきらないと一座会が出来ないのでは......??
さてさて。そんな熱い、狭い夜が明け、母ちゃんは今、涼しくて広い、長野県の駒ヶ根に来ております。
こちらも、ある意味母ちゃん役として来ているんですが、まあ、そのお話はまた(笑)。
母ちゃん、次の本番は次の日曜日、こちらの公演です。ヴェルディ《レクイエム》。
そしてそして、ついにこちらも近づいて来ましたーーー!!!
https://www.facebook.com/events/218007038673240??ti=ia
おかげさまでラストスパートのチケットお申し込みが増えて来ておりますが、まだお席、あります!遠慮せずにご連絡下さい!!
明日明後日あたり、Facebookイベントページに全プログラムを載せたいと思いますので、ぜひ覗いてみてくださいませ〜!!!
母ちゃん的おまけ。
息子(実)が、息子(仮)の楽屋に入り浸って帰って来ませんでした。#オペラシティ #滝の白糸 #村越欣弥