mezzosoprano 鳥木弥生blog

オペラ歌手(メゾソプラノ)鳥木弥生の日常、演奏会情報など。

《チェネレントラ》稽古開始。ロッシーニと私......

今回、チェネレントラの公演に向けて、過去の懺悔から始めたいと思う次第です......。


以前、イタリアの某食関係の雑誌の、

フィレンツェ、サンタクローチェ教会に眠るロッシーニの前でオペラ歌手と音楽について語る」

みたいな企画の対談をしたことがありました。

実際は当時住んでいた、トリノ近郊のブラという街の「Boccondivino」というレストランで超美味いピエモンテ料理を食べながらの取材だったんですが...。

色々適当すぎで、私が話して記事になった内容も、

「イタリアオペラには、人生経験がなければ歌えない曲がたくさんあるけど、ロッシーニはそれを求めていない気がするから、若者でも歌えちゃう!」

って感じだったような......。

(ロッシーニファンの方には失礼な話がまだ少しあります。閲覧注意?!)


まず、ロッシーニを勉強する気満々でイタリアに行った私に、師匠バルビエリが放ったのが、

ヴェルディを歌える歌手に育つ可能性があるなら、面倒な思いをしてロッシーニを歌う意味がどこにありますか?(いや、ない)」

というお言葉。

でも、彼女もチェネレントラは歌ってるんですけどね。
「労多くしてなんとやら」
みたいな経験だったと思ってるようでした。
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(女優さんが演じていて吹き替えが師匠。ビデオしか持ってなくて今聴きたくても聴けない!)

そして、バルビエリの死後に師事したテノールのマッテウッツィには、

「やよいはDiplomatica(ディプロマティカ=如才ない)に見えて実はPazza(パッツァ=狂女...?)だからロッシーニぴったり」

と(悪口)言われつつ、ロッシーニの極意と歌う喜びを教えていただいておりますが、なかなか会得は難しく......。


音楽のおばあちゃんと音楽のパパ、2人の異なるロッシーニ観を浴びた私。

素直に「ロッシーニいいよねっ!」と言えない子に育ってしまいましたとさ。

それどころか私の心理には、
「あのロッシーニはすっぱい」
という完全昇華も近し!といった感もありました。
そこからの、ゴマメの歯ぎしり的な、
ロッシーニに人生経験はいらない」
発言だったのかな?
愚かな過去の私よ!!


ちなみに、音楽の母オブラスツォワは60過ぎてからロッシーニの魅力に気付いたそうで、猫の二重唱はよく一緒に歌います。
ただ、音を正しく歌うことより、本気で猫の物真似をすることが重要らしく、うっかり普通の頭声を出すと、

「コラアー!今人間が出てきただろー!!」

と、こっぴどく怒られます。

江戸家猫八師匠に弟子入りした気持ちになれます。


えー、こんなにロッシーニに対して消極的な私が今までに歌ったのは、

ランスへの旅」メリーベア
タンクレディ」イザウラ
セビリアの理髪師」ロジーナ

の3役。(忘れてなければ!!!)

いずれも藤原歌劇団の公演で、指揮はロッシーニの権威、を超えて権化のようなアルベルト・ゼッダ氏。

本当に素晴らしい経験でしたが、実に......
(あ、順番間違えた)。

実に大変でしたが、本当に素晴らしい経験でした!!!


さて、今回は、むしろ舞台に乗らないのはもったいないような、「エスプリの権化」、辻博之さんの指揮。

母ちゃんメゾソプラノは果たして「プリンセスの権化」になれるのか!?!

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8月が皆それぞれ忙しいようで、早い始動となり、音楽稽古が始まっておりますが、すでに笑いが絶えない稽古場。

ダブルで25日にチェネレントラを歌う小泉詠子さんとは初対面ですが、私と同じ石川県出身でした!
瞳に知性が輝くプリティーな方です。

知性派といえば。
俗に言う(笑)「東大出身美人ソプラノ」
川越塔子ちゃんとの共演も楽しみすぎー。

彼女とは、イタリア時代ほぼ毎夏Vacanzaを共にした仲で。

塔子ちゃんが住んでいた素敵な海辺の街に、盆地のフィレンツェや、山中のブラに住んでいた私が押しかけていただけなんですが......。

同じプロダクションにいたことはあるけど、実は同じ舞台に立つのは初めて!
(忘れてなければ!!)


他にも、はじめましてな方々、お久しぶりな方々、たいへん面白そうな顔ぶれです。

ぜひぜひ、9月25日、26日、川口リリアでの「チェネレントラ」にお越しくださいませ!

末筆となりましたが...「チェネレントラ」とは、童話の「シンデレラ」のことですが、ガラスの靴もカボチャの馬車も出てきません。

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そして、なんと、大笑いできるコメディーなんです。


イタリア語歌唱ですが、もちろん字幕付き。
予習ありでも、なしでも、お楽しみいただけると思います!