mezzosoprano 鳥木弥生blog

オペラ歌手(メゾソプラノ)鳥木弥生の日常、演奏会情報など。

誕生日前日の想いと、初体験。

小さい頃から色んな方に「大器晩成型っぽいね」と言われ続けた(笑)、つまりノロマを絵に描いたような私も、明日で42歳になります。

「晩」にはまだ早い気もするけど、24、5で歌い始めてまあまあ経ってる。「成」は全然してない。だいたい「大器」かどうかも分からない!(笑)

でも、私が唯一自信を持って言えるのは、世紀のメゾソプラノ2人、バルビエーリとオブラスツォワを師匠に持ち、ものすごく愛情をかけて、厳しくも激しく(笑)、教えをもらったこと。

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この二枚は2人がそれぞれすごく気に入って自宅のいいとこに飾っていた写真。
左がバルビエーリのカルメン、右はオブラスツォワのシャルロット(ウェルテル)。

私自身は、こんなに愛されているのは、私の性格が良いからに違いない!と信じていたんですが、それを人にいうと、必ず怪訝な顔をされ、「え?」「はあ?」と言われ、ついには後に私の夫となる人に、
それはむしろ思い上がりだ!君には単純に歌が上手いという以外の美点はない!
と...。

いや、確かに彼女たちに何か貢献したなんてことはひとつもなく、歌を教えてもらい、色んなチャンスをもらい、色んな場所へ連れて行ってもらい、ご飯を食べさせてもらっていただけなのですけど...。
(オブラスツォワに食べさせてもらったキャビアやきのこスープ、バルビエーリの作ったトンノのパスタ、バカラ、豚ローストと付け合わせの玉ねぎとジャガイモ...忘れられません!)

でも、なかなか自分が「歌が上手い」なんて思えず(笑)。だいたい師匠たちが偉大すぎるし。

とはいえ、いつまでも自信が無いのでは聞いてくださる方々に失礼だし、だいたい私は自分のやれるだけのことをやっているのか??
と、いうのが、私が42歳を前に感じた疑問。

楽譜に向かって作曲家の意図を汲み取ろう、書かれたものを最大限に再現しよう、作品のあるべき姿を見せよう、役柄にふさわしい声を出そう、観客にいつもフレッシュな表現を届けよう!
......そういう努力は、時間の許す限りしているつもりですが、もしかしてそれでは、足りないのでは??という疑問。

なんというか、芸術家として「大成」するためには、ある意味もっと「ダーティーな努力」(笑)が必要で、狡猾でなくてはいけないのでは?という...?

思えば、師匠たちも人生においてそんな部分があることを匂わせつつ、いつも「でもあなたはそのままでいてね」というメッセージをくれていたような気がします。

つまり、結局、私は師匠たちの遺志通り、42歳になっても、きっとこのままなんですが(笑)。

こんな母ちゃんメゾソプラノを必要としてくれる方々のために、この身を捧げようと再認識する、誕生日前夜でした。


さてその3月26日は、友人のチェンバリスト水野直子さんと一緒にオーチャードホールへ。
山田和樹マエストロ指揮マーラー交響曲第6番を聴きに行きました。
先月、山田マエストロと《カルメン》でご一緒したご縁で。


しかし、私にとってシンフォニーを聴きに行くのはある意味チャレンジ(笑)

少し前に、少し話題になった、こんなこともありましたが...。


シンフォニーに関しては、自慢じゃないけど完全に素人な私。幸い?周りにうんちくを語る方はいませんが、割とオケ好きな夫も「マーラーは長いからなあ」と言うし!!
実は寝ちゃったりするんじゃないかと思っていました。
ちなみに私の隣にいたスコア持参のマニア風な方は、途中かなり寝てましたけど(笑)

もっとちなみに、夫の弾くチェロは、もしも私が聴いたら別れが訪れるレベルらしく、聴かせてもらったことがありません。天使のラッパか、マンドラゴラの叫びか......どんな音なんでしょうねえ!


えー、ところが、私、寝ませんでしたし、控えめに言って、めっちゃ楽しみました。

初めて聴くのに(恥ずかしい?笑)、何故か「そうそう、こう来るよね〜、そう思った!」というデジャビュならぬ、デジャエクテ(すでに聴いた)感?を楽しんだり、逆に意外性に痺れたり、単純にかっこいい〜〜、と思ったり。

曲中にハンマーが出てくるのですが、最初のマエストロによるトークでそれを聴いてから、

ハンマー→Il Trovatore(鍛冶屋の合唱)→ヴェルディ

と連想したせいで(全然ハンマー違いですが)、一応同時代も生きていたヴェルディマーラーの共通点を探したり、このマーラーのようにヴェルディを洗練させた解釈で演奏するのはどうだろう?と色々想像してみたり(ちゃんと聴いてない!?笑)。

3楽章以降は特に、いないはずの合唱やソロの歌い手がいるような気がするほど「歌」を感じて、本当はない歌詞まで聴き取れるような、クリアな情感が溢れる演奏でした。

ハンマーは本当、痺れました!!(笑)
演出?も良かった。

実は母ちゃん、中学でブラスバンド、高校はオケでホルンを吹いていたのですが、久々に吹きたくもなったよ〜。

ちなみにプログラム前半は武満徹ノスタルジア(OEKではお馴染みだけどほかでは初めて聴きました)で、そちらも扇谷泰明さん(年末、九響第九でお世話になりました!)のソロも含め、引き込まれる演奏でした。

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昨年12月の《仮面舞踏会》で「ウルリカ通りまーす!」と軽トラ扱いされていた以来の、オーチャード楽屋にて(笑)、山田マエストロと。


そして、帰りにはやはりシンフォニー初心者で、「舞台にあんなにたくさん人がいる!」と言っていた(笑)古楽女子、チェンバリストのなおちゃんと、初体験の喜びを語りつつ、美味しいお酒を楽しみました。
(あと、来年の古楽女子演奏会の計画も!)


さて、夜が明ければ私の誕生日ウィークとなります。


いったい何が待ち受けているのでしょうねえ〜(笑)。

スペイン行きも迫ってきたから、荷造りも頑張らねば...!!

あ、ついでに?なおちゃんのカスタネット姿も出しとこうっと。似合うよ!

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