mezzosoprano 鳥木弥生blog

オペラ歌手(メゾソプラノ)鳥木弥生の日常、演奏会情報など。

武蔵野市民文化会館チェドリンス・リサイタル&藤原歌劇団ノルマ

お題「今日の出来事」

今日じゃなくて昨日と今日、というか、日付変わって昨日と一昨日の話ですが...。

私にとって思い出深い2人のイタリア人プリマの歌を堪能しました。

 

レビューというより思い出話大半ですので悪しからず...。

 

まずは月曜日。私の日本でのオペラデビューだった2003年の「ノルマ」のでタイトルロールを歌ったフィオレンツァ・チェドリンスのリサイタル。 

ベッリーニ:ノルマ 全曲 [DVD]

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彼女とは2003年より前からもチラチラとご縁があり、 その後もチラチラとお付き合いが続けていましたが、昨年スペインに歌いに行った帰りにイタリア、ブッセートで久々に会い、やっぱり素敵な方だなあ、と改めて惚れ直していて。

 

リサイタルではイタリア人らしくない、というと何ですが、ちょっとした演出もついていて(フランスでは多い印象だけど、もしや最近はイタリアでも??)、伝わる度満点なステージ。

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そして盛りだくさんなプログラム...。

「色んな私を見て!」とばかりにそれぞれのキャラクターを演じ分けていました。

日本でも「ノルマ」はじめ同じプロダクションにいくつかカバーなどもして関わらせてもらったし、私が劇場の研修生だった頃によくフィレンツェに歌いに来ていたのもあって頻繁に聴いたソプラノのひとりですが、実演を観ていない役のアリアもたくさん聴いて興味津々。デズデモナやサントゥッツァ、アンコールで歌ったアドリアーナ・ルクヴルール...まだまだ観たいし聴きたい。

声のパワーはありながら、繊細さの権化とも言える曲作りにはがっつり感動させられました。

ピアニッシモへのこだわりがすごくて、バタフライのアリアを前奏後、会場が静まり返るまで30秒くらい(印象としては...実際は半分かな?笑。でも非常に長い間)待ってから歌い始めたのも凄かったなあ。

アンコールでは日本歌曲の「初恋」も披露してくれ、かつてレナート・ブルゾン氏が「荒城の月」でみせてくれた「日本語のの母音はフランス語のUの発音」という勘違い(笑)をまた聴けたのもご愛嬌?...とても美しい情感で歌いあげてくれました。

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終演後、サービス精神が過ぎて退館時間を過ぎそうになって超急かされながらチェドリンス様に「セルフィー!セルフィー!」と言われて撮った写真(笑)

 きっとまたいつか再会できるのを楽しみにしよう。

 

さてさて、そして昨日、火曜日。

マリエッラ・デヴィーア様の「ノルマ」。

デヴィーア様は御年69のプリマ。

チェドリンスの「ノルマ」の翌年に同じラ・ヴォーチェ主催「ルチア」で来日された時が出会いかなあ...とはいえ私はそのプロダクションには関わっておらず、その時にはコンサートとオペラを聴いてパーティーでお話しして...というくらい。めちゃめちゃクールな方で「素晴らしかったです」と話しかけたら「そう?」くらいの返事で当時まだ20代の若造で根性なしの私は「え...あ...はい...」と、めちゃくちゃ戸惑ったのを覚えています。

あ、そういえばその時コンサートで聴いたデヴィーアの日本の歌、「さくら〜 さくら〜」のの母音はめっちゃ深いUでした(笑)

そしてさくら1回目はmf、繰り返しはpp、というやはりベルカント様式だったよ!!

 

それからかなり経って、数年前に「ラ・トラヴィアータ」で来日されたおり、私がフローラで共演させていただいた時にはもう少し気楽に接していただけました。

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全然どうでもいい話なんですがついで?に。

イタリアで私が住んでいた場所の近くで、いつも通過する高速出口にDeiva Marinaというのがありまして、そこを通るたびにMariella Deviaに似てるなあ、と思い出していたのも、一方的な彼女との思い出!

 

そんな名プリマ、デヴィーアの「ノルマ」。

とにかく聴いて良かったー、としか言いようがない!!

 

本当に好みだけの話で言うとアリア、Casa Divaの前半部分(カヴァティーナ)は、その後たぶんお得意な後半(カヴァレッタ)のための声慣らし的にも聴こえたデヴィーアより、初っ端からこれでもかと情緒を深めまくるチェドリンスの方が好きかなー。同じ役を歌うとはいえ、ノルマが唯一の重なる部分であとは全く違うレパートリーの2人で、比べるのもおかしいんですけど。

デヴィーアのノルマはやはり背後にロッシーニを感じるノルマだし、チェドリンスのノルマは予言者らしくヴェルディの登場を予言してる感じ?

しかし、後半に行くにつれて溢れまくるノルマの情や苦しみを美しい様式感を崩さずに表現するデヴィーア様にはゾクゾクさせられました。

やはり元メゾソプラノ(コントラルティーノ、と言ってたかな?)のチェドリンスとは違う1000%ソプラノ!という女子力を感じたなあ〜。

 

ともかく連続してDivaたちの歌声に酔えた贅沢な二日間でした。

 

いつも素晴らしい東フィルと藤原歌劇団合唱団もデヴィーアのノルマの世界にきっちり沿っていて美しかった!!


そして、デヴィーアさまを相手に美声、様式美、そしてキャラクターでも存在感を示したポッリオーネ笛田博昭さんとは、7月30日と9月8日に共演させていただきます!

すみません!便乗宣伝します!!!

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こちらでは私、笛田さんとカルメンのフィナーレを歌うはず。

 あ、フラーヴィオを歌われた及川尚志さんもご出演だ!ノルマで及川さんの歌を聞き足りなかった方もぜひ〜。チケット残り些少かと思います。

 

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9月8日のこちらはベルカント一本勝負。

「ノルマ」からも数曲。笛田さんのベルカント、ポッリオーネをまた聴きたいな、て方はぜひ〜。

まだ少し先なので今ならチケットに余裕ありますが、そんなに席数も多くないので、ご興味ある方はお早めにご予約、お買い求めを!!

https://www.facebook.com/events/218007038673240/?ti=icl

 

いつもやってる宣伝も図々しいな、と感じるのは(結局するとはいえ)、2日連続で大プリマたちの真摯な姿を見たからだなー。

この気持ちを忘れるなよ、私!!!