mezzosoprano 鳥木弥生blog

オペラ歌手(メゾソプラノ)鳥木弥生の日常、演奏会情報など。

幻の吟遊詩人。「Il Trovatore」

ただいま稽古中の、ヴェルディ作曲のオペラ「イル・トロヴァトーレ」。

邦訳は「吟遊詩人」。
吟遊詩人といえば、ドラクエのお城や城壁の上で「あーおーいーそーらー こーとーりーはーうーたーうー」などと歌っていたりする人です(VII「エデンの戦士たち」では職業として選べるように!)。
 
日本語ではざっくり「吟遊詩人」と訳されるものの、実は色々種類(レベル?)があるようです。
彼らは南フランスを中心とした中世ヨーロッパで活躍していたようで、
”ジョングルール”は市井の旅芸人、
ミンストレル”は宮廷の雇われ音楽家、
そして
”トルバドゥール”は城主や騎士、貴族出身も多く、「騎士道」や「宮廷愛」を歌い、ジョングルールやミンストレルが「演奏家」であるのに対して、トルバドゥールは「創作家」、
と、言われております。
その他時代を変えて色々呼び名、役割もあったようで、かなり面白そうなので、いつか万が一論文でも書く機会があれば題材にしたいかも!
 
日本の「琵琶法師」も吟遊詩人だろうし、「ギターを持った渡り鳥」ももしかしたら!?!
ドラクエの吟遊詩人はミンストレルかな?戦う方はやはりトルバドゥールかな?(笑)
 
オペラのタイトルである「トロヴァトーレ」は”トルバドゥール”のイタリア語訳ですが、原作はスペインの戯曲「エル・トロバドール」で、物語の舞台もスペインです。(ちなみに、”エル”、”イル”は定冠詞)。
時代的には旅芸人的な存在としてジプシーが台頭してきた15世紀の話で、その頃には実際にはトルバドゥールは衰退していたそうです。
そのトルバドゥール(トロヴァトーレ)であるところのマンリーコの(育ての)母であるジプシーの女性が私の役であるアズチェーナ、という...。
あれ?トルバドゥールって身分高い人じゃなかった?いや、実際はマンリーコは高貴な生まれなんだけど、それは誰も知らないはずだし...。
 
他にも不思議なことがいっぱいのこのオペラなんですが、私はその整合性のなさ、ミステリアスさが、むしろこの作品のロマンチックさ、魅力に繋がっている気がします。
 
キャラクターも、レオノーラ、ルーナ伯爵は常識的な観客が感情移入しやすいまっとうな側。
対して完全に浮世離れした存在の、マンリーコ、アズチェーナ。
しかしレオノーラが恋に落ちてしまうのは何だかどこの馬の骨かもわからないマンリーコ。
 
今回の公演、歌手自身のキャラクターがうまく対比を導き出す予感がしております。
いや、私は浮世離れはしてませんけど!A型だし!
笛田さんも馬の骨ではないですけど、いかにも「伝説のあいつが来たー!」と思わせる容貌と声。
与那城さんは誰もが「レオノーラ、そっちにしときなよ」と思ってしまいそうなダンディーさ。
そして里美さんは二人が争うに相応しい凛とした美女で「あんな人があんなフラフラしてわけわかんないこと言ってる男に翻弄されてるー!あわわわー!でもちょっとありそう!?ていうかあったら嬉しい!?!」なんていう妄想を掻き立てられます。
 
北陸、関西、中部地方の方はまずは3月21日のこちらで試し聴きを。
トロヴァトーレ以外の名曲も聴けます。
金沢駅前でマチネなので遠くからでもお気軽に!
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そして銀座ヤマハホールでは「イル・トロヴァトーレ」のみをたっぷり堪能していただけます。
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レオノーラ    小川里美
マンリーコ    笛田博昭
ルーナ伯爵    与那城敬
アズチェーナ 鳥木弥生
 
エレクトーン 清水のりこ
演出、構成    彌勒忠史
 
お見逃し無く!