mezzosoprano 鳥木弥生blog

オペラ歌手(メゾソプラノ)鳥木弥生の日常、演奏会情報など。

朝から泣いた話。「Tくんの冒険」

昨日は銀座オペラ《蝶々夫人》とアルテリッカしんゆり《ラ・トラヴィアータ》の稽古があり。


その後、劇団東京イボンヌ《俺の兄貴はブラームス》の顔合わせ(には間に合わず、その後の親睦会という名の飲み会)に参加。


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イボンヌの皆様との刺激的な異文化交流にワクワクしすぎたせいか、帰宅してもしばらく眠れず、薄闇の中でじとーっと可愛い息子の寝顔を見つめたりして......。


今朝は少々寝不足で、新年度初レッスンのため、朝から西武線に揺られて仏子へ。

少々気分が荒れていたらしい(笑)。


所沢、狭山ヶ丘を過ぎ、車両の人口密度が下がって来た入間市あたりで、向こうの方に雛には稀な美女を発見(入間市に失礼か!?もちろんいい意味で!笑)!


大学の同級生で、ママ友で、今はオペラ歌手としても先生としても同僚のソプラノRちゃん。

売れっ子な上にママで、普段なかなかゆっくり話す時間も取れない彼女と会えたことで寝不足で狭くなっていた心も晴れ晴れと広がったのですが......。

Rちゃんが勤務大学までの道中語ってくれた話がドキドキのスペクタクルで、更に涙を誘うもので...その上、明日は我が身


忘備としてここに記したいと思います。


彼女のご子息、Tくんが、私の息子の一学年上で、新一年生。

幼稚園から小学校になり、何が違うかと言えば、自力通学になること。


自転車の後ろに乗っけてお喋りしたり、歌を歌いながら送り迎えをした息子が!!

いつでも誰とでも手を繋いで歩きたがり、左右の大人の組み合わせによって、素敵な同性愛カップルや、「捉えられた宇宙人」の絵面を街に提供して来た息子が!!

ドン・キホーテでママを見失ったと思い、慌てて違う人についてエスカレーターに乗ったところで勘違いに気が付いて振り返り、「ママア〜〜〜」と泣きながら運び上げられていった息子が!!

一人で歩いて学校へ?!!

(エピソードはTくんではなくうちの息子のが混ざっております)

想像しただけであまりのスリリングさに震えました。

しかも、Tくんの通学路は家から徒歩、バス、徒歩、電車、そして徒歩、という複雑極まりない超難関。

サポートで5年生のお姉さんが途中で待ち合わせしてくれるそうなのですが、家から電車に乗るまではひとり!

ひとりきり!

Rちゃんはしばらくバスには一緒に乗ってあげようかと思っていたそうですが、小学校から、「よほどの事情が無い限り一人で通学させること。無事に着くか見守ったりしないで下さい」とのお達しがあったそう。

そんなわけで、Rちゃん、と一応名前を伏せた理由がここからなんですが(笑)

学校からのお達しを他所に、不安げに家を出たTくんを、Rちゃんは当然、尾行

しかし、不安のあまり全速力でバス停に向かうTくんを家の前であっさり見失うRちゃん。

慌てて家の中に戻り、まだ寝ていた旦那さんを叩き起こし、自転車で二手に分かれて捜索。

無事バスに乗り込むTくんを発見し、そのまま自転車でバスを追跡!

バスから降りてくるTくんとニアミス(笑)

必死すぎてすぐ近くにいるママにも気付かず、Tくんはまた走って5年生のお姉さんと待ち合わせの駅改札へ。

全速力移動をしたため、待ち合わせ10分前に到着したTくん......。


そんな物語を悲しみと喜びをたたえた瞳で話すソプラノRちゃん。

共感し、半泣きで聞くメゾソプラノ母ちゃん。

これはもう、ほとんどあれの1シーンですね。

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ちなみに、Rちゃんも私も田舎育ち(かなりの。笑)

都会を必要以上に恐れ過ぎなのでしょうか??


その後、無事帰宅したTくんから、初登校について彼が描いた絵を見せられたRちゃん。

そこには、握られた小さな手と、少し大きめの手が描かれていたそうです。

サポートで電車から学校まで一緒のお姉さんとTくんの手を描いたらしいのですが、お姉さんとはいえ、まだ小学生の女の子。

男の子とお手々繋いで歩くのは恥ずかしかったのか、実際は手を繋いでくれなかったらしく...。

「手を繋いで欲しかった!」

という気持ちが描かせた架空の風景だったのです......!!

うわーん!!けなげー!!!


「......今、この時のこと、絶対忘れない」

と、目を潤ませて語るRちゃん。


来年はきっと、私が同じ話を話す側で、Rちゃんは先輩として余裕の表情で聞いてくれるのでしょう!


その日が怖いような。

待ち遠しいような。

そんな母ちゃんでした。