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mezzosoprano 鳥木弥生blog

オペラ歌手(メゾソプラノ)鳥木弥生の日常、演奏会情報など。

衣装合わせ。”妊婦とオペラ”

本日は銀座オペラ「イル・トロヴァトーレ」衣装合わせでした。

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こちら、公演のご紹介。


......衣装合わせをすると思い出す、はるかな(でもない)思い出。

私が妊娠6ヶ月であることを誰にも言わずに出演した、とあるオペラ公演。
新演出だったのもあり、ご丁寧に、衣装さんによる採寸がありました。

ちなみに、”事務所が以前のものを提出”、”自分で測って提出”というパターンもよくあります。
”以前のもの”は、まあ、危険を孕んでいますよね。変わります。
”自分で測る”なら現在の数字だから大丈夫なはずなんですが、それがまた......だいたい公演の2、3ヶ月前くらいに提出を求められると、ついつい、出しちゃうんですよね。

「2、3ヶ月後になりたい自分のサイズ」

を。
分かってるんですよ。
「サイズ提出」は、「ダイエット表明」
ではない、と。でもね、追い詰められたらやれる子かな?自分。
なんてね、期待しちゃうんです。
衣装さん、ごめんなさい。もうしません。


さて、私の妊娠中「チュニック」がけっこう流行っていて、ゆったりお腹が隠れる服がよりどりみどり、もともと現在より立派な「オペラ歌手体型」でしたし、私が妊娠していると気付く人は、8ヶ月頃まで、ほとんどいませんでした。

しかし、衣装さんによる「採寸」は流石にチュニックの中身を見て、しっかり測るわけで。
考えました。
ばれるんだろうなあ、そしたら衣装さんに口止め料払わなきゃかな...!?
いや、そこまでするくらいなら普通に公表するよね...。

ヨーロッパでは妊婦でもオペラに出ることを特に問題にせず、むしろ演出に取り入れたり、という話も聞きます。
まあ、役柄が妊娠可能そうに思われる年齢の女性でないと不自然なので、老女役なども多いメゾソプラノには難しいかな。それどころか「男役」もよくあるし。

ともかく、そんなわけで、当時住んでいたフランスではもう妊娠を特に隠してはいなかったのですが、日本では妊娠を理由に役を降ろされた、という話なども聞いていましたし、出演OKだとしても共演者が気を遣うだろうし、出産費用は必要だし!という理屈をもちまして、8ヶ月近くまで妊娠を隠したまま歌いました。


こちらでも少し触れた、信頼する松が丘助産院の宗先生も応援してくれましたし、実際、つわりも出産寸前まであり、変化する自分の身体に対する戸惑いや不調のなか、「歌うこと」は大きな救いになっていました。
歌っている時だけは身体も頭もすっきりして、できれば24時間歌い続けていたいくらいでした。


「採寸」の時にもどります。
さあ私のウエスト、というか母子手帳的に「腹囲」。
当時90センチ前後。
もちろん衣装さんのメジャーもその数字を叩き出します。

いつもは口数が多い私が、無口になりつつ、衣装さんが数字を記入している紙を見下ろすと、そこにはすでに、共演者の男性2人のサイズが記入済みでした。
B...W...H...。

全部三桁。

おかげさまで、妊婦の腹囲もインパクト薄く、ごく自然に書き記されたのでした。

見てしまって申し訳なかったですが、衣装さんもたぶんまだ男性の分しか書いてなかったから隠してなかったんですよね、きっと?

色んな意味で「恵まれた容姿」の方が多いオペラ界。きっとあなたの身の回りのオペラ歌手も「衣装合わせ」の面白エピソードをひとつ、ふたつ持っているはず。
ぜひ尋ねてみてください。