mezzosoprano 鳥木弥生blog

オペラ歌手(メゾソプラノ)鳥木弥生の日常、演奏会情報など。

「天才の印」〜 トスカーナ、すべての道はヴィンチ村に通ずる!?

イタリア人は星座占いが大好きです。

本当によく星座占いの話をします。
日本で言う「血液型占い」くらいの感じかな?

イタリア語で「星座占い」は

oroscopo(オロスポコ)

上げるポコか?それとも下ろすポコ〜?!
なんて言うタヌキのキャラクターがいても良さそうですが......。

星座は、

segno zodiacale(センニョ ゾディアカーレ)
または、ただ単に
segno(センニョ)
とも。

segnoは、印、記号、という意味です。

「君の星座なあに〜?」
は、

Di che segno sei?(ディ ケ センニョ セーイ?)

で、このフレーズは、このまま映画のタイトルや、テレビの番組、コーナー名にもなっていますが、直訳すると「星座なに?」ではなく「君は何の印で生まれた?」みたいな感じ。私はこの質問をされるたび、

お前は何の宿星のもとに生まれたのだ?

と、聞かれている気がして、ケンシロウになった気分でした。

(ちなみに、北斗の拳はイタリアでも放送していて人気があり、「お前はもう死んでいる」は、「Sei gia' morto(セイ ジャ モルト)」。)

そして、

Sono dell'Ariete(ソーノ デッラリエーテ)

牡羊座です」と私が答えると、まあ、色んなことを言われるわけですけど(笑)、何人かに言われて、そりゃいいねえ〜、と思ったのが、

segno del genio(センニョ デル ジェーニオ)=「天才の星座」

だね、という話。

これは、残念ながら牡羊座の人がみな天才だ、という方向性の話ではなく、一人の「万能の人」とも言われる天才中の天才が牡羊座生まれだ、ということ。

さて、その、「万能の天才」といえば!






1452年4月15日、フィレンツェ共和国ヴィンチ村生まれ。

レオナルド・ダ・ヴィンチ全絵画作品・素描集 (25周年)

レオナルド・ダ・ヴィンチ全絵画作品・素描集 (25周年)

欲しいな、これ。


私がイタリアに留学し、いきなりフィレンツェ歌劇場のオペラ研修所に合格してしまって呆然としている時に、最初に話しかけてくれたのが、テノールのレオナルド君でした。

私が「ダ・ヴィンチと同じ名前だね」
と言うと、
「僕はヴィンチ村のバールでバイトしてたんだよ。だから、僕はレオナルド・ダ・ヴィンチだ!とも言えるね!」
と軽口をたたいておりました。
私が「ディカプリオと同じ名前だね」
と言っていたなら、
「僕はカプリ島のバールで...(以下同文)」
とでも言ったかな......?ちょっと無理があるか。
いや、ダ・ヴィンチも無理あるけど。


そのカプリ島、じゃなくて、ヴィンチ村ですが、フィレンツェに住んでいるときに、それはもう、何度も行きました。

当時のボーイフレンド(現在の夫)の愛車、73年だか74年だか製のFiat500で、友人たちとフィレンツェを出発する時に目指しているのは隣町、エンポリにあるというボーリング場なんです。いつも。

しかし、このボーリング場、何度道を聞いて出掛けても辿り着けないガンダーラ。

当時はカーナビもGPS付き携帯も無かったしな。

そんなわけで、諦めてどっかいこう、となった際に、いつもその行き先となるのが何故かヴィンチ村。
レオナルドの発明に関するものがたくさんあって、楽しいは楽しいのです。

そして、Fiat500の古いエンジンを心配しつつ、「ヴィンチ村、あちら」の標識に導かれて、トスカーナの丘陵をゆくわけです。

それは、それは、美しい......。

トスカーナの丘―イタリアの田園暮らし

トスカーナの丘―イタリアの田園暮らし

トスカーナの美しい丘陵地帯は悠久で、その姿は、遥か昔から変わっていない、という例えとしても、またダ・ヴィンチがでてきます。

いわく、「もしもダ・ヴィンチが現代のトスカーナに連れてこられても、ちゃんとヴィンチ村の自宅まで帰りつける」、というもの。


そんな話を聞いてトスカーナの丘陵を見渡したら、誰でもレオナルド・ダ・ヴィンチになった気になりますよね?

......ならないかな?

私はなりました。一瞬だけ。

そして思いました。
「天才」って、この「見渡す限り」が、全て、常に見えている人のことを言うんじゃないだろうか、と。
広々した視界が、生まれながらに(またはごく幼少期から)頭の中にある人。


もしそうだとしたら、元々頭の中には狭い世界しかない凡人も、色々な場所に行ったり、新しいことを知ったりするのは、少しだけ「天才」に近付くことなんじゃないかな、と。

「視野を広げる」

とか言うと、なんか、「意識高い」感じで(笑)、あれなんですけど、まあ、まさにそういうことですよね。

一瞬の「万能感」、「天才気分」、味わいたい方はぜひダ・ヴィンチを意識しながらトスカーナの丘陵地帯に立ってみてください。

とりあえず行く予定のない方はこちらの映画でも...?

踊れトスカーナ! [DVD]

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イタリアにいるとき、テレビ放映で何度か観ました。
で、日本に帰ってきてレンタル屋で邦題をみて驚愕。確かに、トスカーナに踊り子が来る話ですから。分かりやすい、けど......。ちょっとイタリア映画をバカに......し、してないよね!!
原題は「Il Ciclone(イル・チクローネ)」=サイクロン。

今、フラメンコ熱も高まってるところだし、私も久々に観たいかも!