mezzosoprano 鳥木弥生blog

オペラ歌手(メゾソプラノ)鳥木弥生の日常、演奏会情報など。

芸術の秋!!オペラの秋!!!藤原歌劇団《カプレーティ家とモンテッキ家》

お題「芸術の秋」

 

全ての芸術は音楽に嫉妬する

とは、ニーチェの言葉。

楽器は常に人の声(歌)を理想としている

というのもよく聞く言葉。

(今ちょっと「シンバルとかも?」と思いましたが、合唱でワーッて叫んだらシンバルと同じような効果でもっと胸に迫るかもしれないし、ぜひシンバルにもそこを目指して欲しいです。笑)

 

そして、オペラは人の声の芸術ですが、もちろんオーケストラあり、舞台美術あり、演劇もあり、その他諸々...総合芸術と呼ばれます。

 

芸術のデパートや〜

ってことですね。

 

つまり、芸術の秋。

何をすべきかと言えば、

 

オペラを観に行く、聴きに行く

 

これしかない、ということです!!

 

ちなみに、オペラの故郷イタリアでは、伝統的にオペラは「見に行く(観に行く)」ではなく、「聴きに行く」と言いますが、私の師匠ロシア人メゾソプラノのオブラスツォワが、《カルメン》で演出家のゼッフィレッリと揉めた時に、「確かにオペラは聴きに来るものだが、何かを見に来る人だってきっといる」と、今では当たり前なことを主張され、その新鮮な意見に納得したそう。

で、結果、すんごいシリアスな歌を歌ってるときに横でロバにボトボト落し物をされて、お詫びにゼッフィレッリから楽屋を埋め尽くしそうな大きなバラの花束をもらったそうです。芳香目的?(笑)。

 

もとい。

 

今から私がオススメするオペラには生きたロバは出てきませんのでご安心を...。

 

藤原歌劇団公演「カプレーティ家とモンテッキ家 I Capuleti e i Montecchi」2016年9月10日、11日 | JOF 公益財団法人日本オペラ振興会

 

来週末、新国立劇場で公演される、ベッリーニ作曲のオペラ

《カプレーティ家とモンテッキ家》

は、中世イタリア、ヴェローナの街で起こった世界一有名な悲恋、ロミオとジュリエットの伝説をもとにした作品。

残念ながら世界一有名にしたのはオペラではなくシェイクスピアの戯曲ですが...。

ベッリーニがこのオペラを作曲するより200年ばかり早くシェイクスピアの作品は存在したし、他にも「ロミオとジュリエット」という恋人たちの名前をタイトルにした作品がいくつかすでにあったようで。

そこをあえて、対立する両家の家名を並べたタイトルにし、ストーリーもシェイクスピアにおもねらなかったところに、私はベッリーニの、イタリアの天才作曲家としてのプライドを感じます。

 

夭折の天才作曲家といえばモーツァルトばかりが有名ですが、このベッリーニも、先ほど書いた《カルメン》を作曲したビゼーも30代半ばで亡くなっています。

 

この作品、メゾソプラノ、女性としてロミオ(イタリア語読みでロメオ)を演じることなどについて以前に書いたものもよろしければ...。

 

ロミオとジュリエット。ヴェローナの街で、2人はなぜ引き裂かれたか? - mezzosoprano 鳥木弥生blog

 

舞台でロメオとして生きること #日本で女性として生きること - mezzosoprano 鳥木弥生blog

 

またシェイクスピアと比べますが、このオペラは登場人物も少なめで、ストーリーもあまり枝葉末節は無く、本筋だけがズドーンと進んでいく感じがものすごくイタリアオペラっぽく。

そして、もちろん起こる出来事は大悲劇でしかないのですが、そのメロディーの流麗さ、重唱やオーケストラ、合唱の多彩な響きの中に、私は何か、泣きながら微笑んでしまうような喜び、愉悦を感じるのです。

 

 

ついつい笑みが浮かんでしまうのは、一緒に歌う仲間が普段からトンチとシャレの効きまくった、一癖も二癖もある歌手たちだから...というのもあるかも...?

 

こちらがソリスト全員集合プラス藤原歌劇団総監督。

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右から、

カペッリオ(ジュリエッタの父)、豊島雄一さん。日本人離れした深い声でここぞという一言の説得力と迫力がすごいです!

ロレンツォ(ジュリエッタの家の医師。恋人たちの味方)、坂本伸司さん。物語中唯一の優しい男(笑)にぴったりな暖かい美声と語り口が際立つ方!

ジュリエッタ、光岡暁恵さん。ベルカントを歌わせたら右に出るものはないスーパーソプラノ。オケ合わせのとき、前奏曲木管が非常に技巧的なパッセージを演奏するのをじっと見つめる目が「私にそれ、歌わせてみろよ」と言ってました(笑)。

総監督、折江忠道氏。輝いてます。外側だけでなく内側も!!

ロメオ、私、鳥木。

テバルド(カペッリオがジュリエッタの婿、後継に指名するロメオの恋敵)、所谷直生さん。藤原歌劇団の秘密兵器?!南米系テノールのような粘りのある美声にぜひ注目して欲しい!

 

 

先日、稽古場にいらしたライターの小田島さんにもこんな風に言っていただけました!

 

 

もちろん元々オペラが大好き、ベッリーニが大好き、という方々にもぜひ、観て聴いていただきたいのですが、オペラあんまり知らないやー、て方にも来て欲しいなあ。

全くオペラ興味ない、て方がこれを読んでくださっている可能性は割と低めかと思いますが(笑)、もしいらっしゃったら!

 

はい!あなたです!!あなたのことです!!

 

ぜひぜひ、この機会、なんの機会かというと、予習しなくても余裕で話が分かって感動できるオペラを観る機会に。

 

「ああ、ロミオ、あなたは何故ロミオなの」

というシェイクスピアの名セリフはありませんが、もっともっと素直で劇的で心を打つ言葉が、美しいメロディーと共に目と耳に飛び込んで来ます。気持ちよく泣けます。

 

1幕フィナーレ、両家の兵士達が争いの火花を散らす音楽の中、ロメオとジュリエッタだけが全く別の世界を歌う、ある意味非常にトリッキーな曲があるのですが、そこで恋人達が語る言葉を最初に読んだ時、私は思わず楽譜に落涙しました。

 

Se ogni speme è a noi rapita

たとえ全ての願いが絶たれ、

Di mai più vederci in vita

二度と生きて会うことができなくても、

Questo addio, ah! non fia l'estremo, ah...

このお別れは、ああ!最期ではないのです、ああ...

ci vedremo al meno...al meno...

せめて...せめて...

 

 

ダメだ!もう涙で目が曇って書けない!!!

続きは劇場で!!!

 

お見逃し、お聴き逃しありませんように〜!

 

藤原歌劇団公演「カプレーティ家とモンテッキ家 I Capuleti e i Montecchi」2016年9月10日・11日 | JOF 公益財団法人日本オペラ振興会