mezzosoprano 鳥木弥生blog

オペラ歌手(メゾソプラノ)鳥木弥生の日常、演奏会情報など。

杉並リリカPresents OPERAMANIA 2 終演!

お題「誰にも信じてもらえない体験」

 ひとつのオペラガラコンサートが開演から終演までで、6時間45分。ほぼ7時間。信じられます?(笑)

私も含め、リハで開演2時間前に会場にいた出演者はその日9時間ホールにいた計算。

(ん?8時〜17時お勤めの方と同じか...?)

終盤出演だった私はリハ後約7時間待ちでしたが、まあ、それは良いとして......。

こちらが全20人の出演の皆さま。

f:id:toriki841:20170801112752j:image

カーテンコールの列、長っ!!!

f:id:toriki841:20170801204352j:image

しかし、一番大変だったのは客席の皆様ではなかったかと思います。

救護班の用意があったとも聞いておりますが...。

こちらのぐらっぱ亭さまのブログにその長大なプログラムが綺麗に載っていますので、ぜひご参考に!

(私も盛大に褒めていただいてますし、ぜひ。笑)

OPERAMANIA 2@杉並公会堂 - ぐらっぱ亭の遊々素敵

 

ももっと客席で聴いてお客さん気分を味わいたいとも思いつつ、結局途中で化粧や髪型も中途半端で人前に出にくい感じにもなり(笑)、幸い楽屋が舞台袖近くだったので袖から皆様のハイパーヴォイスを堪能しつつ、前半何度かはチョロチョロと客席へ。

 

私と唯二メゾソプラノ仲間だった中島郁子さんのドン・カルロ、エボリのアリア”O don fatale”は本当に客席で聴いて良かったと感動!

ぐらっぱ亭さまも書かれている通り、前から上手いとは知っていたのですが、改めて、声も音楽性も文句なしに大好きでした。個人的にはあんなに素晴らしいO don fataleを初めて聴いたと言っても全く過言ではないです(自分はもちろん含めて、コンクール、コンサート諸々、なんならまあまあなレベルの歌劇場で聴いたりしたのも含めても)。

 

うーん。皆さんの素晴らしさを語ろうと思うとやはり8時間労働くらいになりそうなので感想はメゾ推しにとどめまして...。

そういや昨年のOPERMANIA第一弾も4時間くらいあったんだ!!(笑)

杉並リリカpresents ”詩人たちの愛と死”終演。 - mezzosoprano 鳥木弥生blog

来年はどうなる???

 

さてさて、私が歌ったのは。

濃ゆい濃ゆいベルカントヴェルディプッチーニヴェリズモからの流れを受けての?カルメンコーナー。

コーナー、と軽く申しましても、普通にカルメンハイライト、と言っても良いような全6曲。

すでに開演から5時間以上。

お客様(さすがに脱落者も多数。笑)へ、一服の清涼剤となるようなしゃれたオペラコミークを、と思ったのですが、最終的に残念ながら?そうは問屋がおろさず。

ハバネラから、私が歌った曲でいうと、カスタネットの歌〜ホセの花の歌、まではまだ清涼剤の雰囲気もあったと思うんですけど(たぶん)。

カエラの青木エマさんはこんな爽やか美女だったし。凛としたキャラクターもミカエラにぴったり!

f:id:toriki841:20170801112952j:image

(バラ柄がカルメンより似合うミカエラ)。

カスタネットのシーンから花の歌までをご一緒した城宏憲さんも爽やか美男。

真横で聴かせていただいたアリア、花の歌も素敵でした!

f:id:toriki841:20170801113745j:image

(ファンに怒られそうな写真ですみません)

そこまでは、カスタネットも気持ちよく叩けたし、ご期待に添えたかな〜、みたいな充実感。

一緒に写真撮り忘れましたがバリトンの山口邦明さんもスタイリッシュなエスカミーリョで、会場をすっごく盛り上げておられました!!

 

そして、カルメンコーナー最後は、フィナーレ、俗に言う殺しの二重唱

 もちろん殺されちゃう場面だし、シリアスなのかもしれませんが、あんまりおどろおどろしくなく、物語の自然な帰結としてカルメンが死ぬ、みたいな流れが私の好みなんですが......。

まず、

"C'est toi!"(あなたね!)
"C'est moi!"(俺だ!)

と、最初の掛け合いをしたところで振り返った私が見たのは笛田ホセの表情に漲る...殺意!!

あとで聞いたところによると、楽屋を出る時から「殺してやる...殺してやる...」と呟いていたそうで......

凶暴すぎるだろ(笑)。

「恐怖」と「笑い」は紙一重、の事例なのかどうか、あまりの緊張感に一瞬噴き出しそうになったのを何とか抑え、いやいや、ちょっと待て、7時間半くらい前のリハでは「どうする?演技つける?やめとく?ま、軽くやっちゃう?」くらいの打ち合わせだったのに...。ナイフも指輪も無いし、ちょっとしたマイムで...みたいな......でもこれ、絶対違うやつだよね...と...。

「はて、この場をどう収めようか...」

それはもう、リアルに闘牛場の前で自分を殺す運命であるホセに対峙したカルメンの気持ちとリンクした気さえしました(笑)

 

そしていつの間にやら全て湧き出るまま、本能のまま。

基本的に私のスタンスである「恥ずかしいのは嫌」(まあ、それもどうかと思いますが。笑)の一線、二線、K点を完全に超えて、良く言えば潜在能力覚醒、悪く言えばタガが外れた状態??

実際お客様から見て、聴いて、どんな感じだったのかは分かりませんが(いいのか?)、終わって舞台袖に戻ったとたん、歌った二人、ピアニストの藍子ちゃん、そして袖で聴いていてくれた楽屋仲間の山口安紀子さんとで、何故だか大爆笑!!

なんかもう「Duettoというより相撲の取組だった」(山口安紀子談)と。

藍子ちゃんもよくぞあれに合わせてくれたなあ、と感心しましたが、やはり「見ちゃダメだ!見たら終わりだ!」と言うプロ根性?で辛うじて冷静に弾き切ってくれたようでした。

私も、普段通りではありませんでしたが、一応冷静さもありまして、

(あ、笛田くん、ズボン汚したく無いから膝つかない、て言ってたのについちゃったよ!)

とか、

(ナイフも無いし、手刀で殺人?せいぜい内臓痛めて明日は血尿か?)

とか、

(ちょっと死にゆくタイミング早かったけど上手いこと身体支えてもらってるからゆっくりめに音たてて倒れて間をうめよー)

とか思いつつやってて。

まあ、最後のは思ったより頭が落ちる音が大きくゴトン、と響いちゃって皆様を心配させる羽目に(笑)。

全然痛くはなかったんですけどね。

杉並公会堂の響きの良さを感じた瞬間でした。

 

(ちなみに、次回私のカルメンはなんと海の上)。

クルーズ倶楽部|三越伊勢丹旅行

 

今一度プログラムを見返し、やっぱり長いけど、声を堪能する名曲オンパレードで、好きな方にはたまらない、まさにオペラマニアのためのコンサートだったな、と言うことと。

f:id:toriki841:20170801230714j:image

プログラムノート43番。最終行、

二人の激突が今夜実現します

て、予言されとるやないか!

企画、構成、解説のフランコ酒井様、さすがです(笑)。

とにもかくにもの長丁場。

まずは最後まで聴き切った皆様に大拍手!Bravissimi!!!

ありがとうございました。

そして、酒井さん始め、支えてくださった皆様、素晴らしい共演者の皆さまにも、拍手と感謝を。

そして、長い1日、息子をあずかってくれたママ友I一家に大・大・大感謝!

なんでも息子はニジマスつかみ取り体験をしたそうで。私もやりたかったぞ!(笑)

 

さて。母ちゃん次の出番は今週末、今年最初の第九です!

 

練馬区の独立(板橋区から。独立戦争とかはなかったよね?!)70周年だそうで、こちらもお祭り騒ぎの予感??